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EVENT
2026年10月16日
埼玉県立歴史と民俗の博物館
埼玉県春日部市で着工中の現場の帰り、せっかく埼玉に来たのでと前から一度行ってみたかった場所を訪れました。

緑豊かな大宮公園内に位置する建築。埼玉県立歴史と民俗の博物館(旧・埼玉県立博物館)、1971年竣工の前川國男の設計です。


公園から建物へと向かうアプローチ。樹木の間を抜け、建物の外壁や中庭を眺めながら進むと、徐々に建築の全体像が見えてきます。
一般的な公共建築のように正面性を強調するのではなく、ボリュームを分散させその間に生まれる外部空間が、庭園や街路を散策するような奥行きと変化を与えています。

外壁には前川建築を特徴づける打込みタイル。
コンクリートの躯体とタイルを一体化させるこの構法は、日本の高温多湿な気候によるコンクリートの表面の汚れや建物の耐久性の低下といった問題に対する前川の解答でした。
それが同時に重厚な質感と豊かな表情を与え、前川建築独特の落ち着きをもたらしているのだと思います。



エントランスロビーは大きなガラスサッシュによって庭園に向かって開かれており、視線は建物の外へと抜け、室内にいながらも樹木や自然光など周囲の自然との近さを実感できます。
ロビーや展示室など空間全体を一体的に覆う天井には、力強くも軽快なRC打放しの梁架構と円筒型の照明。床には外部から連続するタイルが敷かれ、内外の境界を視覚的に曖昧にしています。

場所によっての高さや外部との関係が変わり、庭園を見下ろす場所、樹木を間近に感じる場所、自然から少し距離を置いて落ち着く場所など、異なる空間体験が生まれます。
建築が独立して配置されているのではなく、周囲の自然や地形との関係によって緩やかにつながり、一つの系を構成している。それによって、館内を移動すること自体が、散策するような体験になっているように感じました。
青森研修でみた前川建築では、弘前市民会館が1964年、弘前市立博物館が1976年。今回訪れた埼玉県立歴史と民俗の博物館(旧・埼玉県立博物館)はその間の1971年に完成した建築です。

【弘前市立博物館】
分散+連結型の配置である弘前市民会館のあと、
外壁に耐候性、耐久性を考慮した打込み煉瓦を採用した旧・埼玉県立博物館や熊本県立美術館を経由し、
各ボリュームが重なる鎖型の平面へと変遷しながら弘前市立博物館へと繋がります。
旧・埼玉県立博物館と弘前市立博物館では、周囲の自然環境との一体的な関係性を構築している点も通じており、前川の建築に対する設計姿勢を感じました。
【弘前市立博物館のロビー】
前川建築についてはこちら 青森研修 ~その5~
前川國男は建築を時代の技術や社会状況と切り離して考えることはできないという認識を示しています。
前川にとっての近代建築とは、技術と空間構成を継承しつつも、素材の豊かさ、歴史、自然、人間の感覚を取り込みながら改良し続けるものだったのではないか。
一連の仕事にそのような姿勢が読み取れる気がします。
ところでこの建築のエントランスロビーの空間、実は映像では何度も見たことがありました。
といのも2004年に発売されたスピッツ『正夢』という曲のMVに撮影地として使われていたからです。
少しノスタルジーな雰囲気と陰影の効いた空間が、この曲の舞台装置として最適だったのでしょうか。
ともかく、色々と感慨深い気持ちになった建築でした。 池内


緑豊かな大宮公園内に位置する建築。埼玉県立歴史と民俗の博物館(旧・埼玉県立博物館)、1971年竣工の前川國男の設計です。


公園から建物へと向かうアプローチ。樹木の間を抜け、建物の外壁や中庭を眺めながら進むと、徐々に建築の全体像が見えてきます。
一般的な公共建築のように正面性を強調するのではなく、ボリュームを分散させその間に生まれる外部空間が、庭園や街路を散策するような奥行きと変化を与えています。

外壁には前川建築を特徴づける打込みタイル。
コンクリートの躯体とタイルを一体化させるこの構法は、日本の高温多湿な気候によるコンクリートの表面の汚れや建物の耐久性の低下といった問題に対する前川の解答でした。
それが同時に重厚な質感と豊かな表情を与え、前川建築独特の落ち着きをもたらしているのだと思います。



エントランスロビーは大きなガラスサッシュによって庭園に向かって開かれており、視線は建物の外へと抜け、室内にいながらも樹木や自然光など周囲の自然との近さを実感できます。
ロビーや展示室など空間全体を一体的に覆う天井には、力強くも軽快なRC打放しの梁架構と円筒型の照明。床には外部から連続するタイルが敷かれ、内外の境界を視覚的に曖昧にしています。

場所によっての高さや外部との関係が変わり、庭園を見下ろす場所、樹木を間近に感じる場所、自然から少し距離を置いて落ち着く場所など、異なる空間体験が生まれます。
建築が独立して配置されているのではなく、周囲の自然や地形との関係によって緩やかにつながり、一つの系を構成している。それによって、館内を移動すること自体が、散策するような体験になっているように感じました。
青森研修でみた前川建築では、弘前市民会館が1964年、弘前市立博物館が1976年。今回訪れた埼玉県立歴史と民俗の博物館(旧・埼玉県立博物館)はその間の1971年に完成した建築です。

【弘前市立博物館】
分散+連結型の配置である弘前市民会館のあと、
外壁に耐候性、耐久性を考慮した打込み煉瓦を採用した旧・埼玉県立博物館や熊本県立美術館を経由し、
各ボリュームが重なる鎖型の平面へと変遷しながら弘前市立博物館へと繋がります。
旧・埼玉県立博物館と弘前市立博物館では、周囲の自然環境との一体的な関係性を構築している点も通じており、前川の建築に対する設計姿勢を感じました。
【弘前市立博物館のロビー】前川建築についてはこちら 青森研修 ~その5~
前川國男は建築を時代の技術や社会状況と切り離して考えることはできないという認識を示しています。
前川にとっての近代建築とは、技術と空間構成を継承しつつも、素材の豊かさ、歴史、自然、人間の感覚を取り込みながら改良し続けるものだったのではないか。
一連の仕事にそのような姿勢が読み取れる気がします。
ところでこの建築のエントランスロビーの空間、実は映像では何度も見たことがありました。
といのも2004年に発売されたスピッツ『正夢』という曲のMVに撮影地として使われていたからです。
少しノスタルジーな雰囲気と陰影の効いた空間が、この曲の舞台装置として最適だったのでしょうか。
ともかく、色々と感慨深い気持ちになった建築でした。 池内
